破船

津崎のお知らせ・作品・日常・雄叫び
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 一個人の趣味の同人創作サイトです。
 一次創作と擬人化(艦船擬人化/企業・組織擬人化)を描いています。各公式、実在の組織・団体とは一切関係がなく、一個人が趣味で描いたものを掲載しています。
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嶋田双葉「冬服の姫」読了 少女と、母と、父と、父の設計の不具合で壊れたジェットコースターに乗って死んでしまった母親の遺児の娘との4人との奇妙な同居話だった


「ずっと一緒にいようよ、真穂」
 わたしは銀河鉄道のジョバンニみたいなことを口走った。
「ずっと一緒にはいられないんだよ、花」
 真穂は静かに手袋をはずした。
「そう、そうだよね」
 わたしはうろたえ、葉をふるいおとした木の数をかぞえた。
「マルコ・ポーロがみつけた、不思議な街の話しようか」
 しゃがみこみ、真穂はいった。
 わたしは突っ立ったまま、うなずいた。
「その都はふたつの世界でつくられているの。ひとつはね、回転木馬やサーカステント、観覧車、射的場、そんな、遊ぶためだけの広場。そうして、もう半分は学校や工場や病院、お役所とか、大理石の立派な建物のかたまり。半分は動かない。半分は移動するキャラバン。ある日、いってしまうのは石でできた建物のほう。屋根も柱も壁も飾りもみんなはずしてバラバラにして、トラックに乗せ、別の街へ移っていってしまう。あとにはテントがバサバサいう音や人々の遊ぶ声だけが残るの。みな、半分からっぽの街をながめながら、いつかまた。街がいろんなところをまわって戻ってくるのを待ちつづけるの」
真穂は膝をかかえ、顔をあおむけた。みおろすと、その目に戻がたまっていた。
「花、わたし、つらい、とか、悲しい、とかよくわからない。ほんとうにわからないの。どうだっていいの。ほとんど、なんでも。わたしって、ずっと、生きてることから降りてるんじゃないかなあ」
 涙が目尻から耳へ流れおちた。
「マルコ・ポーロから、どうしてそうなるのよう」
/嶋田双葉「冬服の姫」